マーケティングなのかブランディングなのか

ある方とお話しする中で、地域活性化の手法についての話になりました。

「愛媛の村おこしはどんな手法で取り組んだのですか?」

実はこれ、これまで幾度となく講演してきた中で、聴講者から必ず質問が出るポイントでもあります。
それはそうです、そこが知りたいですよね。

そんな質問を受けたとき、僕はマーケティングとブランディングのお話をさせていただいています。

マーケティングとブランディング

よく聞くマーケティングとブランディング。
実際どういう意味なのでしょうか。

マーケティング

さまざまな定義がありますが、マーケティングとは「消費者の欲求や希望にアプローチして、それに合う商品開発や販売促進を行う一連の活動」を指すと言ってよいでしょう。
言い換えれば、消費者の心の内をどうにかして覗き見て(あるいは予想して)、消費者が喜ぶものを作ったり売ったりすることと言えます。

ここで大事なのは「消費者ファースト」「消費者ありき」であるということ。
マーケティングの根本にあるのは、「商品は売れてなんぼ」という考え方ではないかと僕は考えています。
さらに「商品は売れてなんぼ」の考えは、裏を返せば「売れない商品は価値がない」「売れない商品は商品ですらない」と言えるでしょう。

ブランディング

一方でブランディングとは、これも定義はさまざまですが、「商品の持つ魅力や価値を発信して、消費者にそのファンになってもらう活動」と言えます。
言い換えれば、商品のよさを発掘し、そのよさを理解する消費者に届けようとすることと言えます。

ブランディングは「商品ファースト」「商品ありき」なんですね。
根本にあるのは、「消費者に媚びない」という考え方でしょう。
これをもう少し強い語調で説明するなら、「その商品のよさを理解できない消費者は相手にしない」と言えるのではないでしょうか。

しかし重要なのは「商品の持つ魅力や価値を発信して」いる段階では、まだ途半ばということ。
もちろんその発信こそがブランディングの活動なのですが、それは最終的に「消費者にそのファンになってもらう」ことで結実します。
つまり、消費者がその商品の魅力や価値を口にしてくれる状態になることがゴールということです。

アップル社って先進的な技術を洗練されたデザインで製品化する企業だ、というのは多くの人の共通認識かと思います。
これはアップル社が自社製品の先進性やデザイン性をアピールすることによって、また実際に製品の優れた魅力を消費者が感じとることによってできたブランドイメージということになります。
今やアップル社が何も言わなくても、アップルファンが代わりに宣伝をしてくれているような状況です。
これがブランディングのゴール、あるべき姿なのです。

ブランドコンサルタントの関野吉記さんは著書の中でこう述べておられます。

大事なのは、「自分たちが伝えたいこと」ではなく、「相手がどう感じ、どのようなイメージを抱くか」のほうなのである。

『好きの設計図』(クロスメディア・パブリッシング、2019年)

ここで勘違いしてはいけません。
「自分たちが伝えたいこと」が大事ではないと言っているのではありません。
それが消費者に伝わり、受けとめてもらうことがもっとも大事だと関野さんは言うのです。

言い換えれば、「これ、いいですよ」「オススメですよ」と言っているうちは、ブランディングではなくマーケティングということになります。
なぜなら、消費者の記憶に残る(あるいは、記憶を塗り替えるほどの)発信をしてこそのブランディングなのに、ただ商品のよさを伝えているだけなら、そのよさが消費者の価値観に照らして受け入れられるか受け入れられないかを判断するきっかけを提供しているだけに過ぎないからです。
それではいくら発信しているといっても、結局のところ消費者の心の内を覗き見ているだけに過ぎません。

ざっとマーケティングとブランディングについて概観してみました。

ではなぜこの2者が「村おこしにどんな手法で取り組んだのか?」という問いに対する答えになるのでしょうか。
村おこしってそんな商学的知識で行うものだったっけ?――そう疑問に感じる方もおられるでしょう。

村おこしとは

村おこしとはいったい何でしょう。
特産品を作ること? 観光客を増やすこと? 移住者を増やすこと?

どれもある意味、正解です。
正解なんですが、もっと大切なことを忘れていませんか?
それらすべてに共通する根本が、「その地域の魅力があってこそ」というものです。
魅力のない地域の特産品が売れますか? 観光客が増えますか? 移住者が増えますか?
とうてい無理な話です。

地域の魅力を徹底的に発掘しましょう。
これといったものが見当たらない場合(そんなことはないはずなんですが…)は、まず魅力を生み出しましょう。
続いてその魅力(「地域の価値」と言ってもよいかもしれません)を発信するのです。

ちょっと耳に挟んだくらいでは、そんな売り文句くらい誰でも言うよねで終わってしまうでしょう。
心に残る言葉で、一度や二度ではなく、繰り返し延々と発信しなければなりません。

もちろんただホームページやブログに書けばよいというものではありません。
SNSやプレスリリース等の、多くの消費者に効果的に見てもらえるツールを駆使しながらです。
その意味でITスキルも必要になるでしょう。

その魅力がオリジナリティに富む、そこにしかないものであればあるほど、その魅力は輝いて見えます。
その地域のファンとなり、商品を買ってみたい、足を運んでみたい、住んでみたいと思う人が出てくるのは当然の話です。

「あそこの地域は○○が有名らしいよ」「あの商品は△△な特徴があるんだって」
消費者がそんなことを囁きはじめたらしめたものです。

さてこの一連の活動はマーケティングでしょうか、それともブランディングでしょうか。
この記事を読まれた方なら簡単ですね。
そう、村おこしはブランディングなのです。

上述の定義に即して言えば、村おこしとは「地域や商品の持つ魅力や価値を発信して、消費者に地域のファンになってもらう活動」と言えるでしょう。
地域や商品の持つ魅力(価値)を適切に理解し、繰り返し発信することでファンを生み出していく取り組みです。
なかなか長い時間がかかることは容易に想像できますね。

マーケティングの弊害

ブランディングに長い時間がかかるとして、その期間中、その活動に携わっている人たちの心理状況はどうなっているでしょうか。
あまりに長い時間になってくると、きっと焦りが生まれてくるでしょう。
こんなことをやっていても成果は上がるのだろうか、やり方が間違っているのではないだろうか、と。

そこで芽生えるのがマーケティング手法を取ってみようという心です。
地域や商品の魅力を伝えても反応がないなら、やっぱり消費者が欲するものを作った方がいいのではないか――そう考えるのですね。

そんなとき、すっぱりブランディング路線を捨て、マーケティング路線に切り替えればまだ望みはあるかもしれません。
でもたいてい、せっかく発掘した魅力を捨てることはもったいないという意識が働き、その発信も継続することになります。
しかし活動のためのリソースは限られていますから、結果としてブランディングとマーケティングが五分五分の状態に。

そんな村おこし、外の人が聞いたらどんなふうに聞こえるでしょうか。
「これがオススメです。そういえば、どんなものが欲しいですか?」と言っているようなものです。
果たしてそのトークに何か感じられるものはあるでしょうか。
中途半端このうえなしですね。

これが僕の考えるマーケティングの弊害です。
マーケティングでいくならとことん消費者に寄り添っていけばいい。
ブランディングでいくならとことん商材に寄り添っていけばいい。
でも村おこしがそもそもブランディングで成り立つ活動であることを考えれば、ブランディング100%で突き進むのが得策ということになりますね。

村おこしするならブランディングに全力を。
それを忘れず、いろんな魅力を発掘してください。

KOBESTでは魅力発掘、そして効果的な発信のお手伝いをいたします。

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